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2015年10月 2日 (金)

Liquid Biopsy(液体:血液 生検)その2

[参考論文]Liquid_biopsy7_2
循環KIT突然変異体(ctDNA)の検出と進化したGISTと患者のポナチニブ抗腫瘍活性との関連。
Detection of KIT mutants in circulating tumor DNA (ctDNA) and their association with ponatinib anti-tumor activity in patients (pts) with advanced gastrointestinal stromal tumors (GIST).


これはASCO2015の要約である。
著者:OHSU (Oregon Health Science University) Dr. Heinrich 他
 
ポナチニブPhase II治験の効果の推移をゲノムレベルで理解する方法のひとつとして、Liquid Biopsy(液体生検)を使用した。治験開始時とポナチニブ服用開始後8週間おきに採血し、レゴラフェニブ治験で使われたBEAMing なる方法を使い、血中内に流れる腫瘍遺伝子の断片を検出した。これら遺伝子の断片は、cfDNA‐cell free DNA と呼ばれている。特にこれらcfDNA のうち、腫瘍のゲノム変異に関したものをctDNA‐circulating tumor DNA (血液循環腫瘍DNA)と呼ぶ。細胞がapoptosis、細胞死するとそのゲノムが分解されその一部が血管に流れctDNAの検出が可能となる。このctDNAのテスト結果と臨床的効果との相関を調べるには、CT、MRIそしてPET/CTを使いRECIST1.1ガイドラインでそって行われた。
(RECIST: Response Evaluation Criteria in Solid Tumors)
―――
Liquid_biopsy10         
 
 
[Sunny NC氏による有用性の解説とコメント]
この治験で非常に興味深く感じるのは、Liquid Biopsy(液体生検)にて抗癌剤の効果が持続的に観測できることです。すなわちCTとかMRIなどの画像観測でなく、腫瘍の増大または縮小をゲノムレベルで直接的、数値的に観察ができて、腫瘍の変異の推移を同定できることだと思います。これで得られる情報をもとに適宜な治療、すなわち新たな変異を抑える抗がん剤服用が可能になると考えます。
 
こうしたCTCとctDNA検出の手法を臨床治療にぜひ使ってほしい。患者に対して、「GISTの残存ctDNAが検出されないので、もうGivecの服用は不要でしょう」と断定できれば素晴らしい。一年ほど前にStanford大学の私の担当医にLiquid Biopsyについて話したら、「Stanfordでもやっています」と返事をもらいました。
 
GSI(米国でのGIST患者のメーリングリスト)でのM. Simcox氏の投稿で、「液体生検」が腫瘍の生検より正確度が4倍も高いとの情報を得ました。生検の12%から48%に正確度が上がったと。4月のAmerican Association for Cancer Research、AACR2013学会でダナ・ファーバー癌研究所(Dana-Farber Cancer Institute)(Harvard大学の付属病院)のGIST研究の権威者の一人、George D. Demetri, MDが発表したものです。大阪警察病院(現 国立がんセンター東病院院長)の西田先生も著者の一人です。
(なぜ48%で止まるのかと疑問が残ります。私の想像では、まだGISTになるゲノム変異そのもの全てが解明されていないからだと思います。それらを標的にするプライマーが必要なのでしょう。)
 
Liquid_biopsy6 Demetri医師は「腫瘍組織生検は本質的に不完全である。生検は腫瘍が不均一であるため腫瘍組織全体をsamplingすることができない。腫瘍細胞は絶えず死滅して、血流にDNAを漏れ流しているので、「液体生検」は、「腫瘍組織生検」の欠点を相当カバーすることができる」と説明しました。
 
この指摘は、切除し摘出した腫瘍細胞のゲノムテストにも適用できると思います。多くのGIST腫瘍は均質的変異でなく、複数の変異が不均衡に発生しています。だから一部分の腫瘍組織を解析しても腫瘍全体を代表しません。
(注:Glivecの耐性がでる主な原因は複数の変異を呈した組織が存在するからです。しかし、現在の多くのゲノム解析はExon11またはExon9の変異の可能性が高いと想定し、それらの存在のみを調べ、他の変異を殆んど無視しており、案外正確度の低いものです。同一組織内に複数の変異が存在しても、ゲノム解析に使用した組織検体が部分的であり全体を代表していないときは、部分的に正確だが全体的には間違った結論になるのだと思います。)
 
「液体生検」は普通の血液検査のように0.5~4ccの血液を送れば、10日で結果が出るようです。レゴラフェニブ治験で使われたinostics会社のサイトを見つけました。ドイツ人が発起人で、3人とも過去にアメリカの大学で長年研究しています。会社はドイツとBaltimoreにあります。すでにテスト血液を受け付けています。
 
現在12種類のゲノム系統のうち1種類または複数種類が同時に検出されます。このなかにKITも入っています。
この中のKITの中には、私のゲノム変異であるW557_K558delが含まれています。
(この会社のサイトは、ブラウザーのCookieを有効にして閲覧してください。) 
多分殆どのCT、MRIの輪切りの幅は5㎜ですが、それ以下の腫瘍は輪切りの間に入り検出されないか、小さくしか造影されません。それに腫瘍の外形が明確でないものも見落とされるでしょう。
 
[Sunny NC氏によるコメントの追加]
この様なコメントを書き、NGS(Next Generation Sequencer)の現状はどうなっているのかと調べ、最近の発展に驚きを感じています。あるサイトでNGSは4つの原理が使われていると知りました。それらの原理は、
Pyrosequencing                           パイロシーケンシング法Liquid_biopsy8
Sequencing by synthesis             合成シーケンシング法               
Sequencing by ligation                 ライゲーションシーケンシング法
Ion semiconductor sequencing   半導体イオンシーケンシング法
 
これらの基本はYouTubeのサイトで説明されています。
 
半導体イオンシーケンシングは2~3時間ほどの短時間で比較的に短いゲノム検出ができLiquid Biopsyに適していると感じています。
日本のとても良いサイトをみつけました。あらゆる分野のDNA解析を専門とする会社のページです。
このサイトの「第3世代シーケンシング技術」の数に驚きました。全てを理解しているわけではありませんが、検出原理は、蛍光、水素イオン、電流変化、光、DNA電荷変化、DNAの直接観察など多岐に亘っています。
 
この中のOxford Nanoporeのナノポアシーケンサーは ポリマー膜にタンパク質ナノポアを埋め込んだチップで、DNAがナノポアを通過する時のイオン電流の変化を検出することにより塩基を同定できるようです。これはPCRによる増殖は必要ないようです。これを説明するYouTubeサイトを見つけました。

Oxford Nanopore Technologies
半導体チップに何万個のタンパク質ナノポアを埋め込み、その周りにDNAストランドの動きの制御(多分電子付加調整にて)そして抵抗、即ち電流を感知する回路を組み込んでいると思っています。もう小さい機器はパソコンのUSBに繋げられ数百ドルで買えるようになりそうです。
 
これらの動きの速さ、そしてバイオサイエンスとエレクトロニクスの合体発達の素晴らしさに驚いています。課題は、如何にこれら機器を使ってがん治療に応用し、一刻も早く私たち患者がその恩恵が得られるかだと思っています。果たして、医師団はついていけるのでしょうか。
 
(2015.9.24 編集と文責 森のふくろう)

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コメント

お書きになった記事を興味深く読ませていただきました。
用語の間違いや、概念の間違いが散見されますが、それは置いといて・・・

「生検は腫瘍が不均一であるため腫瘍組織全体をsamplingすることができない」とありますが、この意味するところは、「一つの腫瘍塊の中で不均一である」のか、「一つの腫瘍塊の中は均一だが、複数の腫瘍塊同士は不均一である」のか、どちらでしょう?

エビデンスのソースと共に、教えてください。

液体生検についてはGISTの臨床治療にも大きな可能性があるように思いましたので、まとめてみた次第です。患者の一人ではありますが、所詮素人ですので、いろいろとお教えいただければ有難いです。

ご質問の件ですが、文章中の4月のAACR2015の該当するproceedingsは入手できておりませんが、一つの腫瘍塊中に複数のDNA変異がある場合が多いと述べているようです。ネット上にもいくつかの資料がありますが、Dr. George Demetri自身の解説としては、
https://www.youtube.com/watch?v=K9HmyXVkXvs
に一般向けの説明があります。
がんセンター東病院 病院長の西田先生も共同研究者のお一人のようですので、五郎丸様が医療関係者であれば、ぜひ直接お聞きください。

一般向けの検査として確立するには、多くの臨床の現場とタイアップした技術の進歩と検証が必要かと思いますが、他のがんや腫瘍も含めて、早期にその可能性をアッピールできる時期が来ることを期待しています。

森のふくろう様

さっそくのレス、ありがとうございました。
youtubeを観ましたが、確かにProf. DemetriはGISTのintratumor genetic heterogeneity(ITH)について言及していますね。しかし現在肺癌、乳癌、腎癌、悪性黒色腫など、いろいろな癌でこのITHが注目されていますが、GISTに関してはまだ明確なエビデンスは得られていないようです。
この概念はtraditional biopsyの確率論に関わる話ですし、分子標的治療の根幹にも関わります。
革新的なnew technologyの恩恵を得られる日が来るのが待ち遠しいですが、まだまだoncologicalな未知の部分が多いのも事実ですね。
また勉強させて下さい。

五郎丸さん、

SunnyNCです。初めてこのサイトのブログポストを読みました。

「GISTに関してはまだ明確なエビデンスは得られていないようです。」は明らかに間違いです。"GIST heterogeneity" と検索すると随分でてきます。
その二つです。
下は2008年のリポートです。Table 2とその下を読んでください。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2693040/

下は日本発の2006年のリポートです。
https://www.researchgate.net/publication/6838015_Intratumoral_heterogeneity_of_MIB-1_labelling_index_in_gastric_gastrointestinal_stromal_tumor_GIST
結論Conclusion.に
Gastric GISTs often show intralobular or interlobular MIB-1 LI heterogeneity. In multilobular GISTs, multiple biopsy samples may be required for the accurate
evaluation of tumor grade.

SunnyNCさん

コメントいただいたことを今知りました。失礼しました。

確かにそのキーワードで検索するとたくさんヒットするのですが、そのほとんどがinter-lesional heterogenityであったり、遺伝子変異とは関係ない話題であることにお気づきになると思います。

挙げていただいた2つの論文は、おそらく検索上位に引っかかってくるものだと思いますが、

1つ目の論文は確かに興味深い論文で、私も注目していました。しかしたった3人の患者さんにintra-lesional heterogenityを認めただけですので、もちろんエビデンスといえるレベルではありません。

2つ目に挙げていただいた論文は、MIB-1の話ですので関係ありません。

他にもPETでのup-takeのintra-lesional heterogenityなど報告は散見しますが、いずれもc-kitのsecondary mutationのintra-lesional heterogenityとは異なる話です。

・・・というわけで、残念ながらエビデンスがあると言うにはまだまだpoorな状況なのですね。

また勉強させてください。

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